少女漫画で押さえておくべき男性作家達
あー、ブックマークコメントで「書くべきか」とか書かなきゃ良かった。面倒臭い!
と愚痴ってもしょうがないのでまあなるべく簡単に。
現状はほぼ全滅してしまったのだけれども、主に60年代~90年代までの少女漫画には少年・青年漫画には無いフロンティアが広大にあって、そこを目指し確固たる地位を築いた男性作家さん達が御大含めて何人かいるのでそこは「押さえて」おいた方が良かろうと考える。
後に上げる数々の作品が後に魔女っ子やセーラームーンまで繋がる変身ヒロインの流れを形作り、世紀末ブームを含めた時代の流れを反映した作品となっているからだ。
戦後黎明期の押さえろ的作家達
・手塚治虫
まあ至極定番だけどここを押さえないと始まらない。もちろん少女漫画としては代表作のひとつでもある「リボンの騎士」を。
少女クラブ版&なかよし版
これがあったから以下に述べるトキワ荘作家をはじめとする先生方も次々と少女漫画への進出がうまくいったんではないかとも考えられる金字塔。宝塚歌劇団やミュージカル演劇のイメージもふんだんに取り込んだ少女達が憧れる変身願望を満たすための意欲作でもある。
・石ノ森章太郎
さるとびエッちゃん
週刊マーガレット連載。
・赤塚不二夫
ひみつのアッコちゃん
りぼん連載
・横山光輝
魔法使いサリー
りぼん連載
この時期の少女漫画誌掲載の男性作家作品群は一部を除きことごとくが変身するヒロイン(しかしロマンス要素は純朴)であることに注目。少女漫画家そのものが希少であった故に穴埋め的に引っ張られてきた大御所にとって、社会的な恋愛というものに作家自身が疎いせいで既存の少女漫画家が描く恋愛漫画が描けないというのもあったろうし、当時はまだまだ女性の社会進出が今以上に抑圧された状況だった、よって変身しそういう抑圧意識から解放される欲望をヒロインに託したのではないかとも考えられる。もちろん読者の目を引く要素を編集含めた雑誌側が要望したこともあろう。
また、永井豪「魔法使いチックル」やつのだじろうの少女漫画デビュー、などもこの辺のトピックに含めておきたいところ。
成熟期のハイブリッド作家達
70年代後半から80年代に入ると少女漫画も成熟し、様々なジャンルのハイブリッドな世界観を持った作家が頭角を現してくるようになる。また、白泉社の花とゆめ創刊によるドラマツルギーと成長神話性を重視した「ガラスの仮面」などの大河ドラマ的展開を持った作品群が読者の支持を大きく受けて、女性の感覚に無いマニアックな知識も散りばめた男性作家達の才能が光り輝くこととなった。
・和田慎二
スケバン刑事でもピグマリオでも無い理由は後述。
・柴田昌弘
和田、柴田両氏はともに主戦場を集英社から白泉社へと移したライバル、友人でもある。また、両作品とも当時の世相を反映して世紀末、超能力、異能力を持つことによる迫害と逃走を描いている。時代性と言うことでは筒井康隆の「家族八景」~「エディプスの恋人」、平井和正あたりともクロスするか。
黎明期の作家達と違うのは、言及する元となった海燕氏のエントリに紹介される魔夜峰央も含めてきちんと主役達のロマンスが描けているところ。(魔夜に関しては男×男の変則(いわゆるJune系、BLでは無いような気がする)だがマライヒは性格・行動ともにまったく女性として描かれている)
また、この辺には主著作は無いものの妻の佐伯かよのと共同作業も多い新谷かおるも含めておきたい。デビューは少女漫画だし、大御所少女漫画家のアシスタントも数多くこなしているようでもあるので。
特異点
・竹本泉
なかよし連載
・吾妻ひでお
プリンセス連載
ギャグマンガであり、現在の”萌え”素材の原型と言うことでも押さえておいた方が良い2人。竹本は吾妻の大ファンでもある。どちらも内容の無い連載が淡々と続くのが特徴。
ホラー系
・永久保貴一
少女ホラー界隈にはまだまだ逸材も沢山居るんだけど、言及は少ないという何だかもったいない状況になっているのでせめて俺だけでも(笑)
現在少女ホラー漫画界で代表する男性作家と言えば彼をおいて外にはいないだろう。なぜか大きく取り上げられることが少ないのがちょっと悲しい。実は永久保氏には昔関わったトワイライトシンドロームというゲームを読み切りで描いていただいた縁もあり(もちろんこの作品のファンであったわけだが)今でも見かけると買って読んでいるのであったりする。
20100620追記:
ヴァー!!
俺の青春、弓月光を忘れてたー!!!
はてなid:rosalineありがとー。
週刊マーガレット連載
少女漫画に少年漫画(しかもエッチ系)の文法を持ち込んだ男性作家の中でもかなり重要な位置づけを持った漫画家。その小学生的エロ妄想な内容は今も変わらず、どころかよりパワーアップして男性誌にて連載中。シナリオ的には男性の考える典型的なエロゲ展開にも関わらず女性ファンも非常に多いのが特徴だったりする。絵柄のエグさが女性に引かれにくいのも一因だろうか。
他にもあすなひろしや高橋真琴も上がっており悩ましいところなんだが、あすなひろしに関しては「青い空を白い雲がかけていった」などはもちろん連載時に読んでいたのだけれども少女漫画関連の資料が無いので言及しづらい。
高橋真琴に関しては竹久夢二から続く美人画の系譜として…とかやりだすとキリが無くなってしまいそうなので、いつか漫棚通信さんあたりが取り上げてくれることに期待をしたいところだ(笑)
20100621追記:
はてなブックマークのコメントより、俺の頭の中から抜けてた作家が次々と。エントリ挙げるとこの辺のフォローがあって思い出すことも多いので非常に有難いなあ。挙げていただいた方々には改めて感謝します。
ということで、ホラー畑から楳図かずお。
週刊少女フレンド連載
このエントリのはてなブックマークコメントにもあるように、多数のフォロワーを生み出し現在のホラー少女漫画雑誌の源流を生み出す原動力のひとつ。中川翔子が大ファンということで際注目されてる部分もあるか。ただ、この辺をフォローしだすと日野日出志作品や「ダイヤの呪い」出版してた黒本近辺を色々調べなきゃいけなくなるので辛いぞオイ、みたいな。
個人的言い訳としては上記作品を読んだのが連載時では無いので少女漫画という感覚が無かったり。「洗礼」もそうなんだよなあ。
あだち充も上がっていたけど、彼の少女漫画作品は確かほとんど原作付じゃないかな。何だかヒットの合間のジャブっぽくて、少女漫画ジャンルとして抑えるにはちょっと弱いと思った。松本零士も同様。この二人をあげるなら「地球へ…」のメカデザインをやったらしいひおあきらとか色々な作品でアシスタント的にマシン・メカデザインを手伝ってる聖悠紀も挙げなきゃいけなくなるのでとりあえず名前だけ記載しておくことにする。
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