奥の深いオタク雑誌文化圏の話(その他雑誌編)
徳間書店関連雑記より、徳間の当時の状況認識としてはそんな感じで良いのではないでしょうか。
ということでついでに自分の記憶の補完も兼ねて、記述してきた徳間以外の他誌の状況も書いてみました。
私の分かる範囲では以下の3つのカテゴリーが大きく特徴的だったという感じです。
(1) マイコンBASICマガジン(ベーマガ)&月刊マイコン(電波新聞社系)
(2) 月刊IO(アイオー)周辺(工学社系)
(3) Oh!(機種名)の雑誌群(ソフトバンク系)
まず、(1)についてはプログラミングと言う行為を掲載されたリストをただひたすらに打ち込むという部分を含めてのマニア・好事家からプログラミングライトユーザーへと広げた功績は大きいと思います。当時はベーマガとマイコンの役割もはっきりと分かれており、ベーマガで日曜プログラミングを楽しみマイコンで自分の機種の周辺情報をあさる、というスタイルだったように思います。それで物足りない部分を後述するOh!(機種名)でさらに突き詰めるというようなユーザーが多かったのではないかと。加えて余談ではありますが、当時の投稿者の中から森功尚などのショートプログラム系のスタープログラマを輩出しているように(当時森氏は小学生)読者の投稿熱も高く、各機種にどんどん自分のゲームを移植していく猛者もいたような記憶があります。
またテクポリでもアスキー系でもない文化として、音楽プログラムコーナーが挙げられます。古代祐三を始めとして当時、また今にも通じるスター音楽プログラマ(こんな括り方で良いのか分かりませんが)はあの当時のモノクロコーナーページの洗礼を多少なりとも受けているはずです。ここからの派生としてベーマガの綴じ込みから始まったコンピュータミュージックマガジンやゲーム音楽プログラム大全集(ムック)などがありました。
ベーマガ自身は80年代後半から若干の方向転換を行いコンシューマ・アーケードを含めたゲームゲーム紹介&攻略ページでゲーム雑誌としての隆盛を極めた後(一時期20万部強発行だったと言う話もある。これはゲーム雑誌でいうと今の電撃PSレベル辺りか?)、90年代に入って学生向けのプログラミング情報誌へと若干の揺り戻しを経て意図的かつ頑固に昔ながらのスタイルを貫き通した結果惜しくも休刊してしまったのですが、個人的には編集部側は確信犯的に雑誌を終わらせたのではないかと思っています。
(2)は80年代当時、へヴィーかつ貧乏ユーザーのバイブルとでもいうべき存在でした。(私みたいなのかな)何しろ市販商品に勝るとも劣らない(市販品を越えているものも多数あった)ゲームや実用のプログラムが全リスト掲載されていたため腕にそこそこ覚えはあるが自分で作るには気力が足りない中級ユーザーにとってはまさにもってこいの誌面構成だったわけです。ただし、あまりに誤植やバグが多いので結果的に雑誌の購入金額を貯めればソフト買えるじゃねえか、な状態になってしまい「実は読者に継続的に買わせるためにわざとやってるんじゃないのか」というまことしやかな噂まで流れ出る状態だったのが微笑ましく思い出されます。
まあそこはさておいて、実際記事や投稿は他の雑誌と比べても非常にレベルが高く初級中級者向け雑誌としては別冊扱いの「PIO」(プログラムソノシート付だった)やポケコン系の雑誌とともにプログラムへヴィーユーザーにとっては晴れの舞台であると同時に良い教科書でもあったのではないかと感じます。
(3)については時代の徒花でもありかつここを語らないと80年代当時のマイコンシーンは補完できないぐらい重要な位置づけにあるのですが、詳細に語るとここだけで結構な分量になってしまうのと他の誌面は分からないってこともあって、ここでは私が愛読していたOh!FM近辺の情報だけ記載しておきます。
当時の雑誌はすべからく総合誌としての作りだったわけですが、80年代は各機種互換性というものがほとんど考慮されていない上ちょっとマイナーな機種になると周辺情報すら満足に出てこない有様だったわけです。そこに目を付けたのがソフトバンク(現ソフトバンクパブリッシング)で、Oh!PC(NEC)、Oh!FM(TOWNS)(富士通)、Oh!MZ(X)(シャープ)を御三家として結構マイナーなHC(エプソン)やHITBIT(SMC)(ソニー)・PASOPIA(東芝)にいたるまでムックや定期発行雑誌として発行する今考えると物凄い状態でした。(そしてそれらにも選ばれないどマイナー機種はベーマガやテクポリが細々と拾っていたと言うのが当時の風景ではなかったかと)
Oh!FMに関して言うと、1行プログラムや音楽ツール&プログラム、CGツールや3Dツール、FMに特化したハード製作記事(音源ボードをさらに増設してMIDIと連動させる拡張BASICの記事などがいたって普通に掲載されていた)など前記したもしくは別投稿で書いた雑誌すべての要素が入っていてまさにマニアックかつカオスな状態でした。また、谷山浩子の「気絶すんぜん!なのら~」や現在はTMPGencで有名な掘浩行(これは記憶違いかもしれないので間違っていたらすいません)の2D&3DCGプログラム&解説記事、「ぐっちゃんバンク」「少年マイクの一人旅」など市販ゲームにはないノリの一風変わったゲームを掲載し続けた天内潤などこれでもかのボリュームにFMユーザーはまず何を置いてもOh!FMを買うべしという雰囲気でした。
また、この隆盛は永遠に続くのではないかと言う錯覚も起こさせました。まあ、そんな妄想は90年代に入って見事に打ち砕かれるのですけど。
Oh!各誌については時代が98~MS-DOS~Windowsへと移り変わっていく中、読者層がよりコアな方向へ収束していき雑誌としての採算ベースにすら乗り辛くなった結果、役目を終えたかのように休刊していきました。ただ、ベーマガやIOなど他の雑誌にも通じるところなのですがここで培ったノウハウを元に現在現役で活躍されている方々も大勢いらっしゃるのでクリエイター文化を創った(特にゲーム業界周辺)という意味では多大な貢献をしたし意義もあったのではないかと個人的には思います。
あと上記に当てはまらない(はまりにくい)雑誌として挙げておきたいのが小学館発行のPOPCOM(ポプコム)で、発行初期は凡庸(*)なマイコン総合雑誌(掲載プログラムは結構楽しめるものもあった)で前にも書いた版権囲い込み事件(*2)をきっかけに浮上してきた雑誌です。しかし、囲い込みは他からの素材が入ってこないことの裏返しでもあるので結局細々と生き延びた挙句気が付いたら休刊していたような気がします。これは同じ小学館のGAMEON(ゲームオン)あたりにも言えることではあるんですけどね。自社版権とコロコロの恩恵に頼ってるだけじゃ読者は付いてきませんよ。
(*)実際はサバッシュ(落語家の三遊亭円丈氏がデザインしたRPG)や海外ゲームの移植販売など見るべきところは結構あったはずなんですが版権囲い込み事件のイメージの悪さでかなりワリを食ってしまったような気がします。
(*2)テクポリ読者だった私には未だに苦い事件として記憶されています。ある日突然テクポリに「小学館系の漫画アニメキャラクターは一切掲載することが出来なくなりました」という一文が載り読者間で大騒ぎとなったのですが、その理由が小学館側が自社の雑誌だけに掲載したいためというようなものだったため結果ポプコムなどの不買運動まで起こりました。
まあ当時はインターネットの現在のような普及もありませんでしたから一部が騒いだに留まり大事にはいたらなかったわけですが、今だったらかなりの抗議運動になっていたかもしれません。実際不買運動まではいかなくても私の周りにはポプコムを買うのをやめた人たちも何人かいましたし。結果としては小学館にとってはマイナス要素のほうが多い買ったのではないかと個人的には思います。80年当時は今ほどの著作権に対する意識もありませんでしたから(実際はジャンプ作家などはまさに囲い込みの象徴だったわけですが)独占欲に対するユーザーの目も今より厳しかったのではないかと思われます。自分にとっては同人や著作物に対してのスタンスを考えさせられる初めての、そして良い機械になったと思っていますけど。
P.S.
徳間(テクポリとファミマガ)の周辺事情に関しては私よりもっと色んなことを聞けそうなところへのヒントを差し上げようかと思ったんですが、ご本人達に確認を取るわけにも行かないので必要でしたら私のこのサイトの右上に本来のトップページへのリンクがありますのでそこにあるメールフォームからでもご連絡いただけると何がしかはオハナシできるかと思います。
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